両生類部会は2020(令和2)年に準備会が発足し、今年度本格的に活動が始まったばかりの新しい部会です。
過去10年間の協議会の中で、両生類について活動してこなかったのかと言われると、そうではありません。
両生類部会の発足以前には、現在の「動物調査と保全対策部会」や「水辺の生きもの部会」が両生類について活動を行っていました。
この両部会での活動実績はこれまでにあったものの、多様な調査や保全活動を実施する中で両生類についての活動が充分に行えないことが懸念されはじめ、市内での絶滅危惧度が著しい両生類を独立させてより調査や保全活動を充実させてはどうかという声が上がり始めていました。
一方で、部会以外での両生類の保全や調査活動は、市内の保全団体や研究者が各々に取り組んでいました。
保全団体が行なっている両生類の調査・保全活動は、各団体が調査対象としているフィールドで行われており、市内全体で活動内容を共有する機会がこれまでありませんでした。
さらに、保全団体だけでは活動が困難な場合、調査地の管理をしている担当行政や学術的知見者との連携を必要とする機会も増えつつありました。
こうした市民団体と協議会の双方から両生類に関しての共通の課題の解決に向けて連携していきたいという願いから、両生類部会が発足しました。
名古屋市内における両生類は、移入種を除いて11種の生息が知られており、「名古屋市版レッドリスト2020」では8種が絶滅危惧種にランク付けされています。
さらに、このうち7種については絶滅危惧度が最も高い「絶滅危惧ⅠA類」にランク付けされています。
これに鑑みても、市内の両生類は著しく危機的な状況だということが伺えます。
アズマヒキガエルに関しては、市内で2015年に初めて絶滅危惧Ⅱ類に入り、2020年には絶滅危惧ⅠA類にランクアップされました。
つまり10年余りで激減している状況になります。
私たちは、丘陵地帯を中心にどんどん姿が見られなくなってきているのを間近で見てきました。
アズマヒキガエルの産卵
ヤマトサンショウウオは、以前カスミサンショウウオと分類されていましたが、近年分類変更されました。
生息地の開発や湿地の遷移や悪化などが影響して、繁殖集団が安定的でない地域がほとんどです。
今後、細分化していく可能性を秘め分類学的にも大変貴重な種であることからも保全が必須であると考えられています。
ヤマトサンショウウオ(メス)
今年度から発足した部会は、20名の部会員でスタートしました。
まずは、現状の把握を皆で共有する目的で、各湿地への見学調査を実施しました。
その中で現状と課題を共有し、今後の活動の方針に役立てました。
また、アズマヒキガエルやヤマトサンショウウオは、湿地の悪化が原因で幼生期から変態上陸できないことが懸念される場所が存在するため、一時的に幼生を保護し、変態間近まで育成したのちに再放流する試みを実施しました。
また、生息域内の保全活動として、地元の保全団体に協力してもらいながら、産卵地の整備なども行いました。
その他、他の部会で行われていた事業の引き継ぎであるウシガエルの防除も実施しました。
また、東山丘陵に生息するヤマトサンショウウオの産卵地の今後の保全のあり方を検討するために、保全団体、両生類部会、センター、東山動植物園、管理行政の意見交換の場を継続的に実施していけるよう働きかけました。
ヤマトサンショウウオ産卵地整備
発足したばかりの部会ですが、両生類の現状の把握と保全活動は少ない種数でありながらここでは紹介しきれないほどあります。
今後アカハライモリとナゴヤダルマガエルの現状把握や遺伝的解析を行う予定で、アカハライモリは移入された個体群なのか否かの解明に務め、ナゴヤダルマガエルに関してはトノサマガエルとの交雑が懸念されていることから、遺伝子浸透の解明に努力していきます。
環境指標動物種としても頻繁に用いられる両生類を未来永劫見続けられるよう保全活動に邁進していきたいです。
湿地見学調査
ヤマトサンショウウオ、アズマヒキガエル
里親飼育