本部会は、元々なごや生物多様性保全活動協議会設立時(2011年)の「ミシシッピアカミミガメ対策部会」と「アライグマ対策部会」が合併して発足した部会です。
当時の部会名が示すように、元々は外来種対策が主な活動でした。
しかし、それだけでは地域の生物多様性保全に繋がらないと考え、外来種対策だけではなく、在来種の調査や保全についても検討する部会として発足しました。
これまでの活動を振り返ってみると、様々な発見や成果がありました。当時、全国的に見ても取り組み事例が少なかったミシシッピアカミミガメ対策については、当部会がいち早く着手し、浮島型罠をはじめとしてより効果的に捕獲できる方法を検討、それらの成果を「ミシシッピアカミミガメ防除マニュアル」として発表しました。
このマニュアルは全国的に参考とされ、2015年には環境省による取り組みである「アカミミガメ対策推進プロジェクト」がなごや生物多様性センターで公表されるに至りました。
2019年には環境省によって「アカミミガメ防除の手引き」が発行され、本部会の取り組みは先駆的な事例として参考にされました。
特に私たちが作製した「浮島型カメ罠(日光浴罠)」は、現在、日本各地で使用されており、また、保全団体、市民との連携についても、協働によるアカミミガメ防除活動のモデルとなっています。
ミシシッピアカミミガメ防除マニュアルを見る(PDF形式:5.22MB)
2012年5月18日 カメ調査(隼人池)
2013年6月5日 浮島型罠の設置(隼人池)
2015年9月18日 アカミミガメによる
水草の食害実験(猪高緑地)
2016年11月9日 浮島型罠での
アカミミガメの捕獲(東山新池)
「アライグマ対策」については、はじめた当初、市内の市街地、緑地に限らず、当部会が市民協働の仕組みをつくり、捕獲を実施してきました。
後に市街地についてはセンターが、緑地については本部会で対応するという形に落ち着きました。
現在、市内においてアライグマが極端に増加せず、それほど大きな問題になっていないのは、本部会とセンターが継続してアライグマ捕獲を実施してきた結果だと思われます。
生物の生息分布調査でも様々な発見がありました。当初、市内では守山区でしか確認されていなかったアカギツネが、徐々に分布を広げ、現在では、中川区や港区といった都市域にも生息することが明らかとなりました。
また、当初、アカギツネをまったく確認できなかった東山公園や大高緑地では、継続的にセンサーカメラを設置することによって、アカギツネの進入時期を特定することができました。
最近力を入れているコウモリ類については、当初、市内で2種類しか確認されていませんでしたが、音声による調査を進めることによって、少なくとも5~6種類のコウモリが市内で活動していることが明らかとなりました。
2013年5月26日 アライグマの解剖実習
(名城大学の学生・センター)
2017年2月20日 アライグマ捕獲調査
(大高緑地)
2013年6月10日 センサーカメラで
撮影されたアカギツネ
(北区成願寺町北野)
2016年3月9日 センサーカメラの設置
(東山動植物園)
このように、外来種対策や生息分布調査ではある程度の成果が得られたものの、在来種の保全については、未だ十分ではないのが現状です。
その中で、ニホンイシガメの保全については取り組みに着手し、野生下で減少しているオス個体を飼育下で繁殖させるという取り組みを行っています。
最後に、本部会の活動は、地域の保全団体との協力関係の下で進めたものが多く、それらの団体や協力者の助けがなければ、ここまでの成果は上げられなかったでしょう。
また、名古屋ECO海洋動物専門学校(元名古屋コミュニケーションアート専門学校)や名城大学の学生の参加・協力にも大変助けられました。
今後も、今までと同様に皆で活動を盛り上げていきたいと考えていますが、コロナ禍の現在、これまで通りに事が進まないのがもどかしいです。
この状況下でも、保全団体や学生が安心して活動できるように、その仕組みについても検討していきたいと考えています。
2013年10月1日 コウモリ調査(名古屋城)
2017年12月18日 ネズミ調査(庄内川)