里山林・社寺林部会は、2016(平成28)年度の会員活動支援「里山林における植物相及び植生の質調査」及び準備会4回を経て、2017年度に発足しました。
部会員は、市内の主要緑地で活動する保全団体や自然観察会の代表で構成され、部会活動の成果を保全の実践に役立てられる様にしています。
植物相、巨樹調査の様子(千種区日泰寺)
本部会は、協議会の活動の中で、これまでに調査されていなかった里山林や社寺林等の樹林地を対象として、その保全管理の効果や植生の質(郷土種の保全状況、希少種や巨樹の分布・生育適地等)の調査を進め、より生物多様性保全に資する保全手法を開発し、啓発に資する知見を集積することを目的にしています。
部会開始年の部会事業には、会員活動支援における準備活動(相生山緑地のアカマツ再生区と同緑地の広葉樹二次林、名古屋大学構内の二次林植生調査)を継続・発展させると共に、希少種の生育環境調査、巨樹・巨木の生育状況調査、外来種・郷土種使用の実態及び意識に関するアンケート調査を追加しました。
調査系の事業では、対象とした緑地の特性に応じた調査活動を展開し、里山保全活動の指標となりうる希少種の成長記録や生育環境を明らかにするための調査、名古屋市で初記録となる植物の発見など、活動初年から、有意義な成果を得ることが出来ました。
千種区城山八幡宮のアベマキの巨樹
自生とみられるエドヒガンの計測
(千種区見附公園)
活動から3年目を迎えた2019年度には、新たな事業として、事業で蓄積されつつある成果をまとめ、効果的に周知・啓発を進めていく事業として、日常生活圏における生物情報の普及啓発手法の検討を追加しました。
このため、里山・社寺林における植生のモニタリング調査及び巨樹の生育状況調査の事業は、2019年度は千種区、2020年度は名東区という様に、年度ごとに区別に調査を行う方法を取り、区別の主要緑地、特別緑地保全地区等のフロラリストの作成を進めると共に、成果の可視化を検討していくことにしました。
(詳細は2019年度なごや生物多様性保全活動協議会活動報告書【資料編】に掲載)
名古屋市内初記録となった暖地性の
大型シダ、ニセコクモウクジャク
意外な植物が見つかり関心する様子
(名東区牧野ヶ池緑地の
大きなカスミザクラ)
また、希少種の生育環境調査においても、調査対象種を絞ることで(2019年度はクロミノニシゴリとザイフリボク、2020年度は前年度2種に加えてウツギ類、アジサイ類、カンアオイ類を対象)、その種の市内における分布、生育状況を明らかにすることにしました。
これまでに、ササユリ自生地の回復、クロミノニシゴリ等貴重種の市内における新たな分布の確認、様々な陽生の低木種が想定以上に減少している実態をつかむなど、名古屋市の生物多様性保全上重要な情報や知見が数多く集まりつつあります。
成果の一部は、センター機関誌『なごやの生物多様性』に掲載されていますので、そちらもご覧ください。
今後の展開として、蓄積しつつある成果について、保全の現場への活用や市民に還元する活動を強化していきます。
具体的には、
①植物相、植生調査で得られた成果をなごやの全種リスト(グリーンデータブック)に反映する、
②調査の成果を保全団体や管理者(区土木事務所、神社関係者等)に還元するための効果的な情報連携スキームの検討、
③東海丘陵要素植物をより広く普及啓発するためのクロミノニシゴリをフラグシップ種としたプロジェクトを行う予定です。
本部会は、こうした活動により、東海丘陵要素などの希少種が生育する里山林や名古屋都市圏に数多く存在する社寺林の生物多様性保全に貢献し、生物多様性都市なごやの実現に寄与していきます。
成果を地元、管理者に還元するための
観察会の様子(千種区城山八幡宮)
自生とみられるエドヒガン。
花柄に団子状の丸いふくらみがある。
千種区平和公園のササユリは、
100個体以上の開花を目指して、
調査・保全活動中。
緑区大高緑地のササユリは、
調査・保全活動により、数個体の開花から
数十個体の開花へと回復した。
市内で最も身近な東海丘陵要素の
クロミノニシゴリ
市内随一のヤマザクラの計測
(緑区大高緑地)